セカンドハウス(第2の住まい)としての透析施設
本計画は、昭和47年に夜間透析可能な施設として開院以来、「透析患者の完全社会復帰」を基本精神とする病院の移転新築である。設計コンセプトは、明るく前向きな生活を送るための「セカンドハウス(第2の住まい)としての透析室」とした。日常から離れた「少しの非日常」を味わえる空間とし、週3回の通院治療が少しでも楽しみになる病院を目指した。
穏やかな川沿いに、透析患者向けの高齢者住宅を備えた病院棟、立駐棟、薬局棟、広場等を計画した。立駐とは渡り廊下で繋ぎ、2階外来透析室へそのまま入られる計画とした。3階には救急車やサービス車の寄り付きも可能で、水平移動による動線分離と短縮を図った。透析室前の高木は深い庇と共に、通院治療中の楽しみや近隣との目隠しの役割も担う。
この病院の象徴となる2階外来透析室は、川側に大きく開く形状とし、高さ700mmの上段下段のスキップフロア構成とした。本来、バリアフリーが求められる病院処置室では、段差はタブー視されるが、この2段構成により、既存の透析室の患者同士の見合いを解決し、半個室空間も形成した上で、外の景色を望める開放感のある空間を実現した。長時間治療を受ける患者に直接風が当たらない空調や、サーカディアン照明の採用で、穏やかな空間づくりも心掛けた。スタッフステーションは上段中央に計画し、テラス側まで症状毎に配置したベッドとチェアを見渡せるよう計画し、安心安全にも配慮した。階段やスロープの設置で、どんな患者もスキップフロアのある透析室を楽しめるよう計画した。固定概念を覆すつくりで「患者に優しく、職員もワクワクな、日本中どこにもない病院」を目指した。
他には、透析食指導も兼ねたキッチンスタジオ、透析サロン、ギャラリー等の空間や、ABWの医局兼事務室、職員専用フィットネス、男女別休憩室も完備し、職員の働きやすさを力に変換する病院づくりも行っている。
所在地 | 福岡県 |
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構造 | S造 |
階数 | 5/0 |
延床面積 | 13,569m² |
竣工年 | 2021年 |
備考 | 2023年照明施設賞受賞 |